アルシエル・テクニカルデータ編纂室【第10回】

◇謳う丘CDについて◇
こんにちは、土屋です。そろそろ9月末です。9月末には、4周年祭で予約していました「三種のぬいぐるみセット」「抱き枕カバー」、そして「謳う丘~Ar=Ciel Ar=Dor~」が発売になりますね。今回は謳う丘CDについて少しお話ししようと思います。今回の「謳う丘~Ar=Ciel Ar=Dor~」は、私も「謳う丘」での作詞作編曲のみならず、「Afezeria HARVESASYA」の作詞と、初回特典ブック(通称伝承本)の全執筆も行っています。アルトネリコ三部作を一通り語り終え、世界観が一周した事もあり、惑星アルシエル全体に関わる部分である「神話」をベースとして惑星全体の設定が主役となる、自分としては願ってもない機会でした。毎度の如く華々しいパッケやページは各方面で露出があると思いますので、ここでは恒例とも言える設定ページを披露したいと思います。今回、詩の想いとして「謳う丘」のみならず、各地方の伝承4曲にも1つずつ物語があります。それらに付随する形で、上記のようなその地方の世界設定ページも用意しました。恐らくこれが、死の雲海で覆われる前のアルシエルの唯一の設定資料となるのではないかと思います。ご興味がある方は、ガストショップでも本日から再版スタート(現時点で注文しても発売日には届きません、ご了承下さい)しましたし、amazonやアニメイト店頭などでの販売はまだ有りますので是非ゲットしてくださいね。さて、本日の質問に対する回答です。今回も次回以降の質問を受け付けております。質問はお一人様3件までとさせていただいておりますので、よろしくお願いします。

こんにちは、編纂室やトウコウスフィアを、いつも楽しく拝見させていただいております。質問ですが、ダイブマシンでコスモスフィア等にダイブしていられる限界時間はあるのでしょうか。コスモスフィア内で、一日二日と経ってしまった場合、実際にその時間が経過しているのでしょうか。

(バクダソ紳士)

ダイブの実質の限界時間はありません。ただ、人間の生理的な代謝などは止まりませんので、自ずと限界は訪れます。またダイブ屋の場合、商売であり、また安全の為にもタイムリミットが設定されています。そういった規則としてのタイムリミットは3時間程度です。通常大抵1回のダイブにかかる時間は十数分から長くて1~2時間程度ですので、それら2点について問題が発生する事は有りません。現実世界の1時間がダイブ内でどれくらいの時間経過になるかは、実際の所一意に決まるものではありません。それはH波空間とD波空間では、時間に関する概念が全く違う為です。ダイブ中に1日、2日経過したというケースがあっても、現実世界では1時間経過していない事などはザラにあります。これはダイブ中での1日は、現実の1日とは違い舞台的である為、その1日のハイライトシーンのみが1日の長さである事(夢と同様で、焦点としたいシーン…具体例で言えば、サキの精神世界であれば、二人の夕食のシーンのみで1日が構成される)、ダイブ内での睡眠などの時間は(それに意味がある場合を除き)通常完全に省略される事によるものです。ですので、実時間で丸一日経過するダイブが行えるのは自前でダイブマシンを持っているか研究施設かどちらかで、研究施設の場合、数日にわたるダイブにおいても生命維持や代謝メンテナンスを行う事を前提としている為危険はなく、前者は極々稀なケースです(機材的にも、ダイバーとレーヴァテイル双方ともが個人で完全に自由の効く場合は滅多にあり得ません)。それでもそのような状況が発生した場合、いわゆる「寝しょんべん状態」になります。すなわちダイブ中で催してしてしまった場合、ダイブマシンの中で現実でもしてしまいます。ただ、栄養失調での衰弱に関しての感覚は、ダイバーレーヴァテイル共にかなり鈍く、餓死寸前まで気づきません。それは、基本的には脳(アルシエルではH波レシーバーとしての意味を持つ)が活動する限界まではダイブに支障がない為です。

土屋さんおつかれさまです。惑星再生によってフィラメントの心臓や傷も治癒するのですか?

(コーン)

「フィラメントの心臓」というのは、そもそもフィラメントが生まれながらにして持つ物理的なボディが患っているフィジカルなものではなく、フィラメントのSH波(=魂)の心的外傷(トラウマ)が、無意識にサキの精神世界で「肉体的な心臓が無い設定」となって現れているものです。ですから、質問を厳密に回答すれば「惑星再生によって心的外傷が軽減され、以後サキの精神世界や、機会があるのであればフィラメントの精神世界にダイブする場合、自己設定において心臓が再生している可能性は高い」という感じになります。

塔周辺の環境は彩音回廊やひねもすの羽根で制御されていますが、それによりその影響範囲周辺の環境には影響は出ますか?

(ざらめ)

彩音回廊は電波と同じで「人工的な波動の作用」による環境構築ですので、原理的には携帯電話の基地局と圏内の関係と同様です。その「内側」か「外側」か、というのは曖昧なラインで明確に「ここまで」と言えるほど厳密ではありません。ただ、境界付近の1kmくらいになると、彩音回廊の影響が弱まる為、大自然側のD波法則との衝突が常に発生している状態になります。その場合エネルギーが強い方が勝つ為、(体感的な)境界線は日々変動しています。(至ってシンプルな話で、例えばアルシエル側から台風が来れば外縁から2kmくらいは暴風域になりますし、逆に彩音回廊が台風を作れば、本来影響範囲内ではない筈の+1km程度までは雨が降るなどの影響が出ます)。プラスして、「波動」から「物理現象」に変換された後は境界線がありませんので、その分が彩音回廊圏内に入ってくる事は多々あります。アオトの故郷「蒼谷の郷」で風が強いと言っているのは、圏内スレスレの場所の為、その外側で作られた突風が吹き抜けて弱まるまでの間に村が存在する為です。

chmod b111000000/nについて質問させて頂きます。二進数は命令でよく使われる表記なので、(111000000)の部分は、どのようなモードにするかを表しているかってことで間違っていませんか? そうだとしたら、少し細かいことですが、チェンジモードって何種類あるんでしょうか? (000)~(777)の512種類あるんでしょうか? また、chmod b111000000/nが、ハーヴェ以外は誰もアクセスできない状態のモードなら、全員がアクセスできる状態のモードとか、あるんでしょうか?

(バイナリヤ~)

原則として、512種類存在する事になります。ただ当然使わないモードは山のようにあるわけで、デジタル故の総当たりといった所でしょう。そもそもchmodの行使権が与えられているのはchmodで権利が与えられている人のみですので、その起点がハーヴェスターシャに存在する以上、ハーヴェスターシャが何らかの異常状態でセキュリティホールを作ったり、AIがとち狂って変なモードにしない限り、「あり得ないパターン」を設定する事はあり得ないわけです。ちなみにこのchmodに対する判断は「人格」よりもベーシックな部分にあり、例え「ご奉仕メイドスキン」や「従順な妹スキン」で人格操作出来たとしても、chmodの操作を不正に促そうとしても失敗します。具体的には「深層意識」と「顕在意識」の関係のように、人格は一生懸命変えようとするかも知れませんが、意思表示として顕在してこないコアなプロセスが拒否する為、絶対に変わりません。夢の中で出てくる「開かない扉」や「動かない身体」のようなものです。

Ⅱのスピカの店での会話で、Ⅰのカードの話が出た時に、ジャクリが司祭と戦ったことについてクロアがひどく驚いていましたが、メタファルスの社会に、司祭という職業が成立するのですか? エレミア三謳神もそこまで熱心に信仰されているようではありませんし…

(torch)

正直なところお話ししますと、厳密な名称についての配慮をしていなかったというのが実際です。ここから先は楽観的ご都合主義になりますが、「司祭」という言葉は、「祭司の最高位者」という意味で、メタファルス的には「教皇」と似た概念になりますが、アルシエルで使われている言語では両方とも同じ単語かもしれません。

歌が重要な要素の世界ですが、歌会のようなものまたは短歌のような短い歌もあるのでしょうか。

(マスカルポーネ)

いわゆる日本流の「短歌」という概念は有りませんが、語呂の良い言葉遊びとしての5-7-5的な文化はあります。基本的には音程のある、ある程度長い歌がメインです。

前回は質問にお答えしていただきありがとうございました! スズノミアのように惑星から切り離された意志は他にも存在すると思うのですが、そういった意志は惑星再生時にはどうなるのでしょうか。やはり切り離されたままなのでしょうか。

(マスカルポーネ)

完全に消滅しきっていない意志はほとんど復活を遂げています。スズノミアも当然復活しています。他にも設定集に出てくるシャラノワールなども瀕死でしたが復活しています。ただ、もう一片の波動も残っていない惑星の意志は復活できません。その変則的な例としては、サキルートのサキです。

メタファリカ大陸の気候ってどうなっているんでしょうか? ひねもすの羽根の気候制御は届きませんよね。だとすると、完全に自然任せになるんでしょうか?

(ヤマト)

メタファリカ創成とは「土の大地を作ること」ではない、とゲーム中でも話をしているように、影響圏内における全てを創り出すものです。要するに、インフェルピラを中心とした半径数十キロの球体内の全てを創り出しているわけです。物質社会に住んでいると理解がしにくいのですが、メタファリカ的に見れば圏内にある「土の大地」はたまたま固体であり、圏内にある「空気」はたまたま気体である、それだけの事なのです。ですから、足下にインフェルピラが創った土があるように、身のまわりにはインフェルピラが創った空気があります。

ふと疑問に思ったことなのですが、第一塔にはテレモはあるのでしょうか? ほたる横丁なんかにはそれっぽいものがあったような気がするんですが、ライナーたちが利用したことないですよね。

(ヤマト)

第一塔にも世界設定的にはテレモは存在します。ただ、ATⅠ制作当時は、実は「よりファンタジー的な世界に見えるように」バイアスをかけていた(これはプロモーション的理由で、当時、初見RPGの第一印象の良さでは「ファンタジー>現代もの」という観念がありました)為、敢えて現代の文明社会を露骨に彷彿とさせやすいものは排除していた為です。

星巡りの相性の欄に記述がある豊穣獅姫=ハーヴェスターシャや武天=マオにはどんな意味もしくは逸話があるのですか?

(ニナ)

名は体を表すの如く、ハーヴェスターシャは「大地の巫女」的なもので、マオは「勇敢なる戦士」です。その逸話は各地方で幾つかありますが、大抵はその名の示すとおり、ハーヴェスターシャは巫女的な、マオは戦争での勝利者といった位置づけで描かれます。むしろ、謳う丘~EXEC_HARVESTASYA/.~のような、豊作や巫女的な意味合いが皆無な伝承が残るソル・シエールの世界の方が特異です。マオはメタファルスで良く登場しますが、ソル・クラスタでも武天として登場します。ラプランカはメタファルス特有の伝承人物で、他の世界ではまず登場しません。

前回もお答えいただきありがとうございました。今回は塔の出力についてです。ティリアの塔ではEXEC_METAFALICA/.で使うのと同等の出力を自前で賄えないとのことでした。これはやはり、塔が不完全であることによるのでしょうか? ムーシェリエルもあり問題無いようにも思えるのですが。

(黒土)

まずメタファリカに必要な出力は、ティリアの塔のみならずメタ・ファルスにおいても不可能とされる流量です。その裏付けとしてラキがネネシャの死をもってまで阻止していますが、あのまま謳い続けていればフレリアの死=第二塔消滅だったわけです。フレリアは第一塔アルトネリコと繋がっていますが、そこから引き出せる量が、メタファリカの消費量を下回る為です(第一塔<>第二塔の極太中継網でも導力転送量が追いつきません)。その問題を解決する為にも、インフェル・ピラは導力貯留施設であり、かつメタファリカのターゲットである必要があったと言えます。尚、第三塔の導力量で足りないのは、レーヴァテイルの人数の少なさと、ティリアの塔の消費シェアが大きすぎる為です。意外な事かもしれませんが、第三塔のレーヴァテイル絶対数よりI.P.D.全人口の方が多いのです(メタファルスの末期人口は約100万人で、統計上のRT比率は0.21pprなので、21万のレーヴァテイルがいるわけです。その中で少なく見積もっても半数以上はI.P.D.ですから、10万人は存在するわけです。かたや計画生産をする第三塔βは、ベストエフォート型SHサーバーに余剰を作らない事も計算の内に入っている為、最高効率の人数を算出します。現状でも3万人以上にはなりません)。

お疲れ様です。
1、ジャミングと言う技がありましたが、あれはレーヴァテイルの何を妨害しているのでしょうか? 
2、戦闘力のみでいえば、ライナー・クロア・アオトの強さの順番はどうなりますか? 
3、メタになりますが、ジャクリエンドの場合、クロアとジャクリはソル・シエールのどこに住むことになるんですか?(それとも旅を続けるのでしょうか?)

(kou)

1ですが、ジャミングというのは強力かつランダムな導体H波を出力し、目標に対し浴びせかける事によって、思考が混乱し、詩が不安定になるものです。2に関しましては、人間一人一人に順列をつけられないように、彼ら順番を決める事はできません。恐らく戦い方や環境、その時の運や体調によって、勝者は変わっていくでしょう。3に関しましては、ご想像にお任せいたします。

第三世代は人間に比べ平均寿命が短いらしいですが、アルトネ世界の技術力(医療込)が上がれば平均寿命は延びますか? 今は無理でも、せめて未来の第三世代くらいは長生きしてほしいもので。

(い~じ~えいと)

第三世代の平均寿命が短い理由は、天寿を全うする可能性が著しく低い為です。人間として老化が早まるとか、身体の組成の劣化が激しくなるという事ではありません。ですから、高齢になってからも、より一層慎重かつ厳重なダイキリティの投与を続けていれば、通常の人間と同等に生きられます。大抵の場合、ダイキリティ投与が不規則になったりしたときに生命力を奪われ、老齢になってからは生命力の回復も若い頃ほど活発ではない為、そのまま病死するか、もしくは衰弱した状態から戻らない、という事になってしまうのです。故に、将来的には対処療法、根治療法含めて解決できる問題かとは思います。少なくともアルキアの開発したブロッキング手術は高齢レーヴァテイルには有用ですから、惑星再生後には普及する事でしょう。

いつもお疲れ様です。気になった事を質問します。
1、オリカはミュールの力を引っ張ってこれるとありましたが、これはフレリアとルカの関係(原理)とほぼ同じなのですか? 
2、第二紀ではシルヴァホルンにより、端末無しで直接謳う事によって魔導サービスを受けれたとありますが、それはどういったサービスなのですか? またそのサービスは第一紀にも存在していたのですか?
3、アルペジオでエスパーダが詩魔法生成物を破壊、本編ではライナーが詩魔法の上に乗っていましたが、詩魔法生成物は立体映像の様な物で触れることはできないのでは?

(ババンゴ売り)

1ですが、原理的にはほぼ同じです。フレリアとルカの関係が「ルカをフレリアの型に入れて焼いたクッキー」だとするならば、オリカとミュールは「たまたまミュールと同じ形になったクッキー」です。どちらもその理屈は同じで、ヒュムネコードの同一化による引き出しや認証の重複を利用したものです。2ですが、第一紀にはソルシエールの人間も、端末を使う事で詩魔法を使う事が出来ました。厳密にはヒュムノススペルの高度版であり、端末でコマンドを入力する事により結果を返すというだけのものです。第二紀以降でも端末を使っていましたが、ミュールの反乱の際にシュレリアが使えなくしました。その代わり、端末を使わなくてもグラスメルクによって似たような事が可能であるという代替を行いました。3ですが、その通りです。これは正直にお話しすれば、アルトネリコ1当時には詩魔法の構造自体がそれ程固まっていなかった為、現在の設定と矛盾している点です。

1)アルトネリコ依存体は「A.T.D.」、インフェル・ピラ依存体は「I.P.D.」、では第三塔のレーヴァテイルは上記省略系を使用するとすれば何と呼称するのでしょうか? ハーヴェスターシャだから「H.S.D.」?
2)ソル・マルタにいる(I.P.D.以外の)第三世代のヒュムネコードを登録(or解析)したら、接続ターミナル名は「ARTONELICO」と「SOL=MARTA」のどちらになるのでしょう? 
3)トウコウではお答え頂けなかったので此方でも…「りっしぜんつくよみ」の漢字は「律史前月読」と「律詩前月読」のどちらが正しいのでしょうか? また、明かされていない「K」と「P」はどの様な意味なのでしょうか? 半分くらいはヒュムノス語に関する質問だったので…ヒュムノサーバーの更新お待ちしております! お忙しいでしょうが、どうか無茶をなさらずお体の方大事になさって下さい…お願いします

(つばくらめ)

1)ですが、厳密に言えばH.D.になります。ハーヴェスターシャは一文節ですから。
2)ですが、接続ターミナル「SOL=MARTA」のβは後にも先にも存在していません。ただ、第二塔計画初期には当然、SOL=MARTAというターミナル名のβも量産予定でした。この予定が狂ったのは、ATⅢ設定本に記載されている「AHPPの介入による第二塔計画大幅変更」の時です。ソル・マルタがスタンドアロンではなくアルトネリコ依存になった時点で、ソル・マルタに独自のSHサーバーが設置される事はなくなり、結果としてSOL=MARTAターミナルは無くなったのです。
3)ですが、「律史前月読」が正解です。意味は「律が体系化される(律史)前に有った「月読」という言語体系、という感じです。律詩前月読は誤植です。すみません。また、「K」と「P」は、アルシエラとしては意味がありますが、律史前月読としてはいまだに意味が厳密に解明していない文字です。現在分かっているのは「K」は「創造と破壊」、「P」は「死と再生」のようなものである、という事くらいです。